『ミュンヘン』
（原題『Munich』 / 2005年 / アメリカ映画 / 164分）
監督＝スティーヴン・スピルバーグ
出演＝エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、キアラン・ハインズ
丸の内プラゼールにて
【感想】　最初は気にかけていなかった映画だ。タイトルを見てもよくわからないし。
ところが、以前本を読んだことがあったモサド暗殺チームの話（「標的は11人」）が
元になっているというので、俄然興味がわいてきて、3時間近い映画というのに見に
行ってしまった。
映画を見るにあたって、再度本を読み直したので、内容がわかってよかった。
本を読んでいなかったらわかりにくかった部分も多いと思う。
本が真実だとすれば、映画はやはり娯楽性もあるのか、見せる作品になっていた。
一番違うな、と思ったのは、映画では主人公がミュンヘンで被害にあったオリンピック
選手の人たちのために暗殺チームに加わり、最後までそれが頭から離れなかった
ように描かれていた点。
本を読む限りでは、ミュンヘンはきっかけに過ぎず、主人公にはそれほど大きな
比重があるようには思えなかった。
あと、映画にもう少し字幕というか、説明があってもいいような気がした。
年月や人物、肩書きなど、ちょっと入れてあればわかりやすかったかもしれない。
この事件自体、30年近く前のことだけど、現在に通じるものもあるし、根本の世界は
あまり変わっていないように思う。
ユダヤ人は昔から、どうしてこんなにも虐げられなければならないのだろう。
民族を選んで生まれることはできないし、生まれ育った環境によって運命が変わって
いくというのは悲しいことだ。
題材があまりにも重くて、すっかり気分が沈んでしまった。

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『SPL　狼よ静かに死ね』
（原題『殺破狼』 / 2005年 / 香港映画 / 93分）
監督＝ウィルソン・イップ
出演＝ドニー・イェン、サモ・ハン、サイモン・ヤム
新宿オスカーにて
【感想】　格闘技は見ないのだけど、K1とかプライドっていうのはこういう感じかな、と
思わせるような映画だった。
気持ちが一緒になって闘ってしまったので、見終わってから疲れた。
最近香港映画は恐いものが多くて、映画を見る限りでは、香港は暴力的で、いつも
ヤクザと警察が戦い、殺し屋が暗躍し、というイメージになってしまう。
もちろんそうじゃないことはわかっているけれど。
ヤクザのボスをどうにか捕まえたい警察のあるチームがインチキしてでも逮捕する
ことを決める。
こんなインチキが通るわけないのになあ。
でも、ビデオが見つかって、殺人はしてないことがわかったとしても、その前に散々
叩きのめしているのだから、殺人罪はなくても傷害罪にはなるんじゃないの、と
思ってしまった。釈放しちゃいけないよねー。
それにしてもナイフ遣いはすごかった。拳銃に負けずに、ナイフだけでガンガン殺して
いくうえ、返り血も全然ない。
素手での戦いもすごい。
ドニー・イェンのファンはたまらないだろうなあ、と思った。
タンクトップ姿にしても、最後の方でジャケット脱いでシャツ一枚になった姿にしても、
鍛え上げた体がカッコよかった。
ところで、元々ハリウッドB級映画好きだった私としては、この邦題、気に入った。
映画に合っているかどうかはともかく、ヤクザと警察のだましあいみたいなのも
におわせるし。
ちなみに私が今までで一番気に入っているハリウッドB級映画の邦題は『男は死んで
血を流せ』。

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『クラッシュ』
（原題『Crash』 / 2005年 / アメリカ映画 / 112分）
監督＝ポール・ハギス
出演＝サンドラ・ブロック、ドン・チーゲル、マット・ディロン
TOHO THEATER川崎にて
【感想】　公開中に2回見に行った映画は久しぶりだ。
1回見て気に入っていたうえにオスカー作品賞を受賞したので、もう一度行くことに
した。
前回は予備知識なく見ていて、時間の流れをつかみそこねていた。
また人間関係も整理しきれていなかったので、今回は余裕をもって見ることができた。
いくつものエピソードの積み重ね、人と人との出会いなんて一期一会にしても本当に
不思議だ。
"クラッシュ"は衝突、だけど、そこまで激しくないにしても、どこかで誰かと出会うことで
時には人生が変わってしまうこともあるわけだ。
たとえば登場人物の1人1人に焦点をあてて、その人の話だけを描くこともできそうだ。
そういう意味で、もっとも興味が引かれたのは黒人の2人組。
この2日くらいの間で一番人生が変わってしまったのではないだろうか。
兄貴風を吹かしていた彼の今後に興味がある。
完結するエピソードとして気に入っているのは、やっぱり天使のマントの話しだ。
後のほうで、全然別のところで謎はとけるけれど、そして天使ちゃんの両親はその
答えは知らないままだけど、衝撃的ながら、胸の熱くなる話だ。
前回はさまざまなレベルでの差別に目が行っていたけれど、今回はそれよりも、
みんながなぜかイライラしている、理由もなく怒っている、というところに目が行って
しまった。
検事の妻が「車強盗にあったせいではなく、毎日目が覚めた時から怒っている」と
友達に電話で話していたけれど、それに気づいただけでも改善の余地はあるんだろうな。
何に対してだかわからないけれど、イライラする・・・日本も最近そういう人が多いと
思う。電車の中でも不機嫌そうな人をよく見かける。
みんな幸せじゃないんだな、と思う。
政治が悪いのかな？
いつからみんながイライラと不機嫌になってしまったのだろう。
やっぱり『クラッシュ』は奥の深い映画だと思った。
また見たら違う見方ができるんじゃないかと期待してしまう。

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『我愛你（ウォ・アイ・ニー）』
（原題『我愛你』 / 2003年 / 中国映画 / 98分）
監督＝張元（チャン・ユアン）
出演＝徐静蕾（シュー・ジンレイ）、佟大為（トン・ダウェイ）
東京都写真美術館ホールにて
【感想】　雰囲気のいいロマンチックな感じのポスター、素敵なストレートなタイトル・・・
と、可愛い恋愛映画を期待していったら大間違いだ。
映画館には20人くらいしか客がなく、しかも私以外はみんな男性だったのでちょっと
驚いた。
それはともかく、冒頭のラブラブムード。
結婚を決めた男女が、免許をとって、仲間とお祝いをして、その流れでプールに
忍び込む。
ここでアクシデント（もしかして・・・と思ったらその通りの事故が起きてドッキリビックリ）が
あり、男は天国へ、そしてしばらくして再会したその時の仲間の男と彼女は恋に落ち、
そして冒頭のラブラブムードのときと同じセリフが繰り返され、2人は結婚する。
ここから先は延々と2人の痴話げんかだ。
怒鳴りあい、ののしりあい、やきもちをやき、うんざりし・・・
それでもどうして一緒にいるのか不思議になる。
見ていて楽しいものではない。
いつ果てることもない痴話げんかの果ては・・・
惨劇にはならないまでも、傷つきあっての別れしかないのだろうか。
離れるとやさしくなれるのか。
長い映画ではないけれど、ちょっと疲れた。
・・・で、最後はどうなったんだっけ？

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『シリアナ』
（原題『Syriana』 / 2005年 / アメリカ映画 / 128分）
監督＝スティーブン・ギャガン、
出演＝ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ジェフリー・ライト
川崎チネチッタにて
【感想】　中東情勢が今ひとつわからないせいもあって、難しかった。
さまざまな国や土地で、さまざまな人が出てきて、それがやっぱり見えない意図で
つながっている。
『クラッシュ』とはちょっと違うけれど、それでも一期一会だ。
元CIA秘密工作員が書いた暴露本を元にしているということで、一連のできごとは
フィクションらしい。“原作”なんていうとまぎらわしい。
難しいながらも、アメリカという国の恐ろしさ、ひどさ、自己中心的考え方はわかった。
ますますアメリカが好きではなくなってしまう。
国のために命をかけて、秘密工作してきた人員を平気で見殺しにするのか。
自分たちの利権のために、他国の重要人物を殺すのも平気なのか。
みんな冷たく事務的に処理していっているけれど、明日は同じことが自分の身に
起こるかもしれないということに気がつかないのだろうか。
それにしても、『クラッシュ』『シリアナ』とアメリカの悪いところを描いてオスカー候補に
なるとは、それはアメリカのいいところと言えるのかもしれない。
政治と娯楽は別なのかな。
ジョージ・クルーニーがこれでオスカー助演男優賞を受賞したけれど、納得の演技。
前に見たことのあるジョージ・クルーニーとは別人だった。

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